遺産分割と不動産登記(相続放棄との違い)

前回のコラムでは、相続放棄があった後に差押えがされた場合について紹介しました。
今回は、相続放棄でなく、遺産分割があった後に差押えがされた場合について事例を使って考えてみたいと思います。

事例


甲土地と高級な外車を所有していたAが亡くなり、その子供B夫とC子の2人が相続人になりました。
車好きだったB夫は、「甲土地はC子の自由にしていいから、外車は俺にくれよ」と言い、C子も車に興味がなかったため快諾して遺産分割協議がまとまりました。しかし、車にお金を使いすぎたB夫は、間も無く金貸しDへの借金を返せなくなりました。そこで、金貸しDは、B夫とC子が遺産分割協議をしたことを知らずに、甲土地の半分をB夫が相続した持分として仮差押えの登記をしてしまいました。

最高裁判所の判断

C子としては、相続放棄の場合と同様に「甲土地はC子のものとする遺産分割協議をしたのだから、甲土地は自分だけの財産だ。B夫の借金のために仮差押えの登記なんてできないはずだ」と、金貸しDに言いたいところです。そして、前回ご紹介した相続放棄についての最高裁判所(最2小判昭和42.1.20)の判断によれば、今回もC子の主張が認められるとも思えます。
しかし、今回の事例について最高裁判所(最3小判昭和46.1.26)は、相続放棄の場合と違ってC子の言い分を認めませんでした。
最高裁判所は、登記をしなければ「正当な利益を有する第三者」に権利を主張できないとする民法177条を出して、「甲土地はC子だけのものである」という登記をC子がしていない以上、C子は「正当な利益を有する第三者」であるDに甲土地全部の権利があるという主張をできない、と判断しました。
なぜ、相続放棄の場合と違う判断がされたのでしょうか?
ひとつには、相続放棄の場合は、金貸しDは相続放棄があったかを家庭裁判所に問い合わせて確かめることができたのに対して、遺産分割がされたかは、この方法で確かめられないから、Dが遺産分割を知らずに仮差押えをしてしまったことはやむを得なかった、という理由が考えられます。
また、相続放棄があったからといって、相続財産が誰のものになるかが、常に決定するわけではありません(例えば、前回の事例コラムで、他にE子という相続人がいた場合、甲土地が誰のものになるかは、B夫が相続放棄しただけではまだ分かりません。E子も相続放棄をするかもしれないし、逆に甲土地を自分だけのものにしたいと言うかもしれないからです。)。しかし、相続人全員によってされる遺産分割が終われば、ある相続財産が誰のものになるのかは決まります。それならば、遺産分割協議によって甲土地はC子のものであることが決まったにもかかわらず、その登記することを怠けてしまったC子のような人が、仮差押えを申し立ててまで借金を返してもらおうと頑張った金貸しDと比べて不利益を受けることもやむを得ない、という考えがあるのでしょう。
まとめると、今回の事例では、相続放棄の場合と違って、C子は金貸しDに対して、「遺産分割協議で甲土地は自分のものに決まったから、B夫の借金のカタになんてできないはずだ」とは言えない、ということになります。

せっかく、遺産分割が上手くまとまって高価な不動産を頂けたのに、ちょっと登記をしなかっただけで、失うことになってしまうなんて、本当に残念な話です。

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